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「シャーリー」からシャーリー・メディスン召喚 ゼロの使い魔はメイド-01 ゼロの使い魔はメイド-02 ゼロの使い魔はメイド-03 ゼロの使い魔はメイド-04 ゼロの使い魔はメイド-05 ゼロの使い魔はメイド-06 ゼロの使い魔はメイド-07 ゼロの使い魔はメイド-08 ゼロの使い魔はメイド-09 ゼロの使い魔はメイド-10
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【作品名】ゼロの使い魔 小悪魔と春風の協奏曲 OP 【曲名】Treasure 【歌手】ICHIKO 【ジャンル】アニメ 【価格】¥200 □■iTMS■□? 【作品名】ゼロの使い魔 小悪魔と春風の協奏曲 ED 【曲名】永遠を探したい 【歌手】ルイズ(釘宮理恵) 【ジャンル】アニメ 【価格】¥200 □■iTMS■□ 【作品名】ゼロの使い魔 夢魔が紡ぐ夜風の幻想曲 OP 【曲名】LOVE イマジネーション 【歌手】ICHIKO 【ジャンル】アニメ 【価格】¥200 □■iTMS■□ 【作品名】ゼロの使い魔 夢魔が紡ぐ夜風の幻想曲 ED 【曲名】Two Moons 【歌手】ルイズ(釘宮理恵) 【ジャンル】アニメ 【価格】¥200 □■iTMS■□
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編集 ゼロの使い魔 ゲーム PS2 ゼロの使い魔 小悪魔と春風の協奏曲 2007年2月15日発売 ゼロの使い魔 小悪魔と春風の協奏曲 公式サイト ゼロの使い魔小悪魔と春風の協奏曲(コンチェルト)初回限定版 ゼロの使い魔小悪魔と春風の協奏曲(コンチェルト)通常版 ゼロの使い魔小悪魔と春風の協奏曲(コンチェルト)Best Collection PS2 ゼロの使い魔 夢魔が紡ぐ夜風の幻想曲 2007年11月29日発売 『ゼロの使い魔~夢魔が紡ぐ夜風の幻想曲~』の発売を記念して二人からのメッセージ 2007年12月12日現在配信中を確認。 ゼロの使い魔 夢魔が紡ぐ夜風の幻想曲 公式サイト ゼロの使い魔 夢魔が紡ぐ夜風の幻想曲(ファンタジー)(限定版) ゼロの使い魔 夢魔が紡ぐ夜風の幻想曲(ファンタジー)(通常版) PS2 ゼロの使い魔 迷子の終止符(ピリオド)と幾千の交響曲(シンフォニー) 2008年11月6日発売 ゼロの使い魔 迷子の終止符と幾千の交響曲 公式サイト ゼロの使い魔 迷子の終止符と幾千の交響曲(限定版) ゼロの使い魔 迷子の終止符と幾千の交響曲(通常版)
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なかなか戻ってこない二人に、ルイズ達は焦りを感じていた。 本当にここで待っていていいのか? 彼らの後を追わなくていいのだろうか? 口には出さなくとも、彼女達の表情が如実にその心境を表していた。 シルフィードで上空から様子を見るか? とタバサは考えたが、恐らく木々に阻まれて何も見えないだろうと思い直し、その案を却下した。 そんな風に皆が皆ギアッチョ達の方に気をとられていた為――彼女達の背後で聞こえていた、ズズズと何かを引きずるような集まって行くような音を意識する者はいなかった。 最初に気付いたのはタバサである。経験から来る何かがゾクリと警鐘を鳴らしたのを感じて、彼女は後ろを振り向いた。 そこにあったのは、もはや八割方完成しつつあるあの大ゴーレムであった。 そしてタバサより遅れること数瞬、同じく振り返ったキュルケが驚愕の声を上げ、その声でルイズがようやく後ろを振り向いた時には、ゴーレムの形成部位はもはや一割以下を残すのみだった。 「あっははははははははは!!」 ついに完成したゴーレムの肩で高笑いをあげる女性に、三人の眼は釘付けになる。 ミス・ロングビルと名乗っていたその女性は、今や正体を隠そうともせずに彼女達を見下ろしていた。 「ふふふ・・・いいわねぇその表情 伝来の至宝を盗まれた貴族みたいないい顔してるわよ三人とも!」 心底楽しそうに言って、土くれのフーケはまた高笑いをする。 「騙したのね!!」 ルイズがキッとフーケを睨む。しかしフーケはニヤニヤと笑うのをやめない。 「ええ騙したわ」と愉快そうに返答し、なおも続けて挑発する。 「このままあんた達を潰しちゃっても面白くないわねぇ そうだ、先に一発攻撃させてあげるわ ほら、やってみなさいよ ん?」 完全にこちらを侮って挑発を繰り返すフーケに、ギアッチョではないがルイズはもうブチキレ寸前だった。しかしキュルケはそんなルイズを片手で制して、 「それ、嘘じゃありませんよね?ミス・ロングビル・・・いや、土くれのフーケ」 微笑を浮かべながら問う。 「失礼ね 私が約束を破るように見えるかしら?」 どの口がそれを言うかと思ったルイズだったが、キュルケはそ知らぬ顔で話を続けているので唇を噛んで耐えた。 「それじゃあ、お言葉に甘えさえていただきますわ」 ニッと笑ってそう言うと、キュルケはタバサに何事か声をかける。それを受けてタバサが手早く抱えていた箱を開け、キュルケに破壊の杖を手渡した。 「あっ!」 とルイズが驚くのと、 「な・・・!?」 フーケが驚愕するのは同時だった。キュルケはフーケが約束を反故にしないうちに詠唱を始める。 唱える魔法は炎と炎。炎の二乗で生成する、フレイム・ボールだった。 破壊の杖がどんなものかは知らないが、この魔法に破壊力がプラスされればフーケのゴーレムとてただでは済まないはずッ! 一瞬のうちにそう判断したキュルケは、破壊の杖をゴーレムに向け、魔法を発動させる! 「食らいなさい!フレイム・ボールッ!!」 「・・・・・・」 シン、と場が静まり返る。破壊の杖からは、炎の弾どころか火の粉一つ発生しなかった。 「あ・・・あれ?なんで?どうして?」 キュルケは焦って杖を上にしたり下にしたりしている。両脇の二人も、何故魔法が発動しないのか全く理解出来ないようだ。 フーケは怯えていた・・・ような演技からさっきまでの凶相に戻り、 「期待外れだわクソガキ共」 と吐き捨てた。 「なんですって・・・!?」 キュルケ達がゴーレムを見上げる。 「その杖ね、使い方が分からなかったのよ どうやら普通に杖として使うことが出来ないみたいでね で、メイジを呼び寄せて・・・使い方を盗んで殺すつもりだったんだけど やっぱダメねぇ」 「ガキなんかに期待したわたしがバカだったわ」と言って、フーケは今度こそ慈悲のかけらもない眼で3人を見下ろした。そして。 「じゃ、死になさい」 言うや否やゴーレムの鉄腕を振り下ろす! 「股下!」 タバサがとっさに叫んで駆け出す。キュルケとルイズがそれに続き、石人形の初撃は虚しく宙を打った。 柱のようにそびえる両の足の間をくぐると、後方でシルフィードが待機していた。 タバサはあの状況に流されることなく、使い魔に冷静な指示を送っていたらしい。 ルイズは改めて、このタバサという少女の実力を痛感した。 先頭を走っていたタバサが飛び乗り、それとほぼ同時にキュルケが飛び乗る。 「ルイズ」 タバサが最後尾だったルイズを促した。しかし―― ピタッ、と。ルイズは止まった。キッと後ろを振り向き、杖を握る。 「ちょ、ちょっとルイズ!何してるのよ!!」 キュルケが慌てて声をかけた。しかしルイズは振り返ることなく言う。 「あいつを倒すのよ!ゴーレムには歯が立たなくても フーケに直接魔法を命中させれば倒せるわ!」 キュルケは愕然とした。本気だこのバカは。 「何を言ってるのよルイズッ!!あの巨人の攻撃をかいくぐってフーケ本体に魔法を命中させるだなんて、そんな芸当私だって難しいわよ!! ここで逃げても誰もあなたをバカにしたりはしないわ!意地を張る必要はないのよ!ねえ!!早く乗りなさいルイズ!!頼むから早く乗ってッ!!」 キュルケは必死で訴える。ゴーレムはどんどんこちらに迫って来ている。 ルイズはカタカタと震えているが、それでも振り返らない。 「ルイズ!!」 タバサが珍しく語気を荒げる。ゴーレムはついにルイズを射程距離に捉えた。 「行って!」 ルイズが怒鳴る。キュルケも怒鳴る。タバサまで怒鳴った。そんな彼女らの状況など気にも留めず、ゴーレムが無慈悲に拳を振り下ろす! 「行きなさいよ!!」 と最後に大きく叫んで、ルイズは駆け出した。先ほどのタバサと同じ戦法で股の下をくぐる。タバサは一瞬苦虫を噛み潰したような顔を見せると、 「行って!」 シルフィードに指令を下す。間一髪、風竜はゴーレムの一撃を避けて飛び立った。 ルイズはゴーレムから距離を取って走る。射程範囲の外にいるうちに作戦を練ることにした。 ――プライドを、捨てる ルイズの考えた作戦は、それだけだった。長い詠唱で呪文を発動させても爆発するだけ。 何をやろうが爆発するなら、最短のコモン・マジックで魔法を乱発する! この速度の速さだけが、自分がフーケに勝っているものであるとルイズは理解していた。 今大事なのはプライドじゃない。そんなものを失うより、ギアッチョを失うほうがよっぽど辛い。よっぽど怖い。よっぽど、悲しい。 ルイズはごくりと唾を嚥下して、ふるふると首を振った。そうだ、それに比べればゴーレムなんて全然怖くない。バッと顔を上げると、ルイズは杖を握りしめてゴーレムへと駆け出した! 「一番最初に死にたいのはあんたかい!」 フーケの指示で、ゴーレムは三度腕を振り下ろす。ルイズはまたも足をくぐり抜けてそれを回避し、そして振り向きざま魔法を放った! 「ロック!」 ドウン!とゴーレムの背中で空気が爆ぜる。失敗だ。ルイズはすぐに気持ちを切り替え、振り向きつつあるゴーレムの足を前面からくぐり、ゴーレムの背面向けてもう一度ロックを唱えた。 今度はゴーレムの腰で爆発が起きる。失敗。 ――落ち着け・・・冷静に照準を合わせるのよルイズ・・・! うるさいぐらいに音を響かせる心臓を片手で抑えて、ルイズはまた足をくぐりに走る。くぐる。振り向く。放つ。失敗。くぐる。振り向く。放つ。失敗。くぐる。 振り向く。放つ。失敗―― 「ちょろちょろとしつこい鼠だね!いつまでも同じ手が通用すると思うんじゃあないよ!」 しびれを切らしたフーケが、続けて下をくぐろうとしたルイズにヒザを落とす! 「きゃああっ!!」 直撃コースだった。無駄だと知りつつ、ルイズは頭を庇う。 ドッグォオン!! ・・・足が落ちてこない。何故?ルイズがゴーレムを見上げると、その頭からは白煙が上がっていた。 「フレイム・ボールのお味はいかがかしら!?」 ウインドドラゴンから身を乗り出して、キュルケが杖を構えている。 「もうちょっと濃いほうが好みだわねッ!」 フーケが叫ぶと、全然堪えた様子にないゴーレムがシルフィード目掛けて腕を繰り出す!器用に避け続ける風竜の上で、 「出来る・・・ことを するッ!!」 ギアッチョに言われたことを反芻し、2発、3発と火弾を放つ。その言葉にタバサもコクリと頷き、得意技のウィンディ・アイシクルを撃ち放った。 空から降り注ぐ炎と氷の雨はゴーレムの体にこそ穴を穿たないが、 その肩に立っているフーケは生身なのである。ゴーレムは両腕でフーケを庇い、その場に棒立ちになった! 一番危険なポジションであるゴーレムの真正面にいたルイズだが、 ――チャンスは今しかないわッ!! 素早く深呼吸をして、すっとフーケを見上げる。グッと杖を突き出して、全精神を集中させる。冷静に、照準を合わせる。わずか眼をつむり――開く。 「・・・・・・ロック!!」 ドッガァァアアァッ!!! 「命中した・・・!!」 爆炎は、フーケの立っている位置、そのド真ん中で炸裂した。 「・・・やった・・・!わたしでも勝てた・・・ッ!!」 ルイズは嬉しさで泣き出しそうだった。ゼロのルイズが、土くれのフーケに打ち勝った・・・! しかし――煙が晴れるにつれ、ルイズの感動は徐々に絶望へとその色を変えた。 煙が晴れたそこでは―― 岩で作った盾の影で、フーケが微笑みながらルイズを見下ろしていた。 「・・・そんな・・・」 ルイズが後じさる。 「あんたの速射に対して・・・いつまでも無策でいるわけがないでしょう?」 フーケが汗を垂らしながら笑う。ギアッチョ達に差し向けたゴーレムとこっちのゴーレム、そしてこの岩の盾で、フーケの力はかなり消耗されていた。 「一旦身を潜めるしかないかねぇ・・・顔を見られちまったのは残念だけど」 ふぅ、と溜息を一つついて、 「だが、こいつをあんたに食らわせる余力ぐらいは残ってるよッ!!」 フーケはギン!とルイズを睨んだ。 バゴァッ!! ゴーレムの胸から岩塊が一つ、眼にも留まらぬ速さで飛来し―― ルイズの左足がはじけた。 ギアッチョとギーシュは、木々の隙間にフーケの大ゴーレムの姿を認めた。 「・・・ヤ ヤバいよ、ギアッチョ!!」 フーケの騎士達から逃げ回りながら、ギーシュが叫ぶ。 「・・・くッ、こいつら僕のワルキューレより強い・・・!」 フーケのゴーレムに、ワルキューレは一体また一体と破壊されていた。 「やかましいぜマンモーニ!無駄口叩いても始まらねぇッ!!」 ギアッチョはその逆、一体、次、その次とゴーレムの首を刎ね飛ばしている。 ギーシュのワルキューレは残り五体。それに対して、フーケのゴーレムは同じ五体を数える。 「もう少し逃げ回ってな・・・ とっととカタをつけるッ!!」 袈裟斬りに振り下ろされた剣をかわし、そのままぐるりと回りこむようにしてゴーレムの後ろに回る。 一瞬の動きで腕を引き、ゴーレムの首を斬り飛ばした。 逃げ惑いながらもギアッチョの腕前に感心していたギーシュだったが、 「あ・・・ッ!?」 あることに気付き、心臓が跳ね上がった。 「ギッ・・・、ギアッチョぉおおぉ!!」 「やかましいって言ったろーがマンモーニ!!」 「それどころじゃあないッ!見るんだシルフィードを!!『ルイズがどこにも乗っていない』!!」 「何・・・だとォオォ!?」 ギアッチョはバッと飛び下がると、上空に視線を移した。確かに、ルイズの姿はどこにも見当たらない。 「――あのバカ野郎 まさか地上で・・・」 他の可能性を考える。見えてないだけでは?いや、それはない。 風竜がどんな体勢になってもルイズの姿は見当たらない。一人でこっちに向かっている? これもないだろう。罠が張られているかもしれないところにむざむざルイズを行かせるようなことをする奴らじゃあないはずだ。 妙な意地を張って地上で戦っている?これが一番ありえそうだ。ルイズはプライドが高い。 己の貴族としてのプライドの為なら、命を捨てる覚悟で戦いに挑むこともあるかもしれない。 そして最後の可能性。ルイズは、もう既に―― ギアッチョはギリっと歯を噛んだ。考えている場合ではない。自分がすべき事は一秒でも早くルイズの元へ駆けつけることだ。 ――ホワイト・アルバムを全開にするか? ギアッチョはこの場を一気に打開する方法を考える。 ――いや、それはマズい オレのホワイト・アルバムは刀やスーツを作る精密さはあるが、敵だけを選んで凍らせるといった器用さはない・・・ッ ギアッチョの顔が苦悩に歪む。そんなギアッチョを見て、ギーシュは一瞬・・・ほんの一瞬考え込み、 そして。 「・・・う・・・うぉぉおおおぉッ!!ワルキューレッ!!僕を軸にッ!矢じりのように並べェェェッ!!」 ワルキューレに号令を発した!ギアッチョはイラついた顔でギーシュを見る。 「何やってるんだてめー・・・黙って逃げてろってのがわかんねーのか!!」 しかしギーシュは壮絶な意思を持った瞳でギアッチョを睨み返す! 「行けギアッチョ!!ここは僕が食い止めるッ!!」 「正気で言ってんのかマンモーニッ!!てめーじゃ勝てねえのは分かってるだろうがッ!!」 「いいから行くんだッ!!」 ギーシュは怒鳴る。 「ここだ・・・!ここで、『覚悟』を決めるッ!!僕はここで、『覚悟』を身につけるッ!!」 ギアッチョはギーシュを見た。ギーシュの眼に、迷いや怯えはない。侮りも思い込みも、恐怖も後悔もない。ギーシュは今、ここで覚悟を知ってやると『覚悟』していた。 「・・・『覚悟』とは 犠牲の心じゃあねえッ! それだけは覚えておけッ!!」 自分を殺した男の言った言葉を、ギアッチョは今ギーシュに伝える。 そして言うが早いか、ギアッチョは後ろも見ずに駆け出していった。 ギーシュは彼に満足げに眼を遣ると、すぐにフーケのゴーレムに眼を戻した。 「いくよワルキューレ・・・『覚悟』を決めろッ!!」 ギーシュはそう叫ぶと、心の中でワルキューレに指示を出す。矢じりの隊形のまま、ワルキューレは右端のゴーレムに突っ込んだ! 先頭のワルキューレの斬撃をかわし、ゴーレムがワルキューレを真っ二つに切り裂く。 しかしギーシュはそれを見越していた。先頭のワルキューレがやられる前、既にその右後ろに陣取った二体目が、先頭のワルキューレの首に向かって剣を振るいはじめていた! 唐竹割りにされた自らのワルキューレの首を更に自分のワルキューレで薙ぎ、そのままフーケのゴーレムの首も刎ね飛ばす! 間髪いれず左側から襲ってくる二体目のゴーレムに、ギーシュの左前に構えていたワルキューレが突きを受けて倒れ――その影から、ワルキューレの槍を拾ったギーシュがゴーレムの首を突き飛ばした! 「肉を斬らせて――骨を断つ・・・か」 ギーシュはようやく気付いた。自分が負けていたのは、力の差があったからだけではない。 朝、オスマン達の前で仲間に頼らないと誓ったにも関わらず、ギーシュは知らず知らずのうちにギアッチョにべったり頼っていた。 自分のワルキューレが倒れるところは見たくない。ある程度の安全圏からサポートしていれば、ギアッチョがケリをつけてくれる。 そんな甘っちょろい考えが、ワルキューレの動きを、攻撃を、判断を、ハンパに鈍らせていたからだ。 それが理解出来たならば、例え相手がトライアングルとはいえ、完全遠隔操作のゴーレムなどに負けるわけがないッ! ギーシュは片手に槍を構えて、高らかに宣言する。 「これで僕のワルキューレは三体・・・お前達は二体だッ!! 僕は逃げない・・・お前達を恐れない そして侮りもしない!! 我が名はギーシュ・ド・グラモン!我が友ルイズの為、そして我が道の師、ギアッチョの為ッ!!今この場で、お前達を斬り伏せることを『覚悟』するッ!!」 自分で槍を握ったことなどないにも関わらず――その姿は雄雄しく、そして気高かった。 ギアッチョは走る。走りながら、何故自分はここまで必死になっているのかと考えた。 たった数週間前に知り合ったばかりのガキのために、何故オレは血管がブチ切れそうな勢いで走っているんだろうか。 ギアッチョは考える。オレが生きていた頃なら、こんなことはありえない。 こんなどっちつかずで下手をすれば両方を失ってしまうような判断はしないはずだ。 ――いや。そうじゃない。生きていた時の判断とは、つまり暗殺者としての判断ということだ。 そういうことじゃない。ハルケギニアにいるオレは、トリステインにいるオレは暗殺者じゃあない。使い魔だ。 「使い魔のギアッチョさんよォォ・・・おめーは何故走ってるんだ・・・?」 解らなかった。あらゆる感情の摩滅した世界で生きてきたギアッチョには、自分の心など解るはずもなかった。だが、理由は解らなくても一つだけ 理解していることがある。 あいつを死なせたくない、自分はそう思っている。それだけは解った。だから。それだけをともし火に、ギアッチョは走る。 デルフリンガーもまた焦っていた。こんな嫌な予感は何年ぶりだろう。 守ると誓ったばかりなのに。ルイズを守ると約束したばかりなのに―― 今朝までロクに会話も交わしたことがなかった娘だった。だがそれがどうした?そんなことは関係ないしどうでもいい。 自分はルイズを守りたいと思った。だから誓った。ならば自分はデルフリンガーの名にかけて誓いを果たす。それだけだ。 ・・・なのにどうして自分には足がついていないのか。デルフが今日ほど己を呪った日はなかった。 雑草の生い茂る地面ではホワイト・アルバムでスケートなど出来ない。 鬼のような形相で森を駆け抜け、小屋を中心に広がる空き地が目前に迫ったその時、ギアッチョとデルフリンガーがそこに見たものは、 「――バカな・・・」 左の足首を吹っ飛ばされて地面に倒れるルイズと、それを今まさに踏み潰さんとする巨大な岩の足だった。 何もおかしいことはない。十分予想していた状況だった。しかしギアッチョはそう言わずにはおれなかった。 そしてそれは、デルフリンガーも同じことだった。 「・・・嘘だろ・・・」 ギアッチョは足を止めない。茂みを掻き分け、空地に飛び込み、ルイズに向かって走り続ける。しかしその頭は、悲しいほど冷静に状況を計算をしていた。 ルイズまでの距離、25メートル。到達所要時間、約3.4秒。 ゴーレムの右足がルイズを踏み潰すまでの時間、2秒未満。 絶望だった。 「うおおぉおあああああああああああああ!!!!」 ギアッチョが絶叫する。いくら叫んだところで、いくら怒ったところで、もう辿り着けない。間に合わない。ルイズは――救えない。 何が最強のスタンドだ。絶対零度は全てを止める?じゃあやってみろよッ!!今ここで!!この距離で!!2秒以内にあいつを止めてみろよッ!! 怒りと無力さと絶望に駆られて、ギアッチョはただ叫ぶことしか出来なかった。 ――たとえ天が落ちてこようが・・・ デルフリンガーもまた、絶望していた。今朝誓ったことを、5時間も経たないうちに破ってしまう。 そしてその場を自分はただ眺めているだけ ――これほど滑稽なことがあるだろうか?デルフリンガーはただの剣だ。目の前で何が起ころうと、彼は常にただ見ていることしか、 この身が、砕け散ろうが―― 「――あ、ああ・・・ああぁああぁあああああああ!!!」 稲妻に打たれたように、デルフリンガーは思い出した。こいつは俺の『使い手』だと。そして、それだけで十分だった。 「ダンナッ!!俺を抜けェェェ!!!」 喋る魔剣は絶叫する。 「イカレてんのかてめーは・・・ッ!!少し黙って」 「いいから早く抜けェエェェェーーーーーーーーッ!!!!!」 鬼神の如きデルフリンガーの絶叫にギアッチョは尋常ではない『意思』を見出し――柄に手をかけ、一気に引き抜き。 ドンッ!!! その瞬間、ギアッチョは消えた。いや、正しくは眼にも留まらぬ速さに『加速』した。 ギアッチョを見ていたものがただ出来ることは、一定の間隔で土煙を巻き上げて弾ける地面で彼の向かった方向を把握することだけだった。 ギアッチョとデルフリンガーは一瞬にして距離を詰め、ルイズを突き飛ばし、 ズン!! 彼女の身代わりになった。 今、何が起きた? 誰もが状況を上手く認識出来ず、場は沈黙に包まれた。 ルイズが助かり、ギアッチョが死んだ。最初にそれに気付いたのは、キュルケとタバサだった。 ゴーレムがその手でフーケを庇っている限り、彼女達にゴーレムを止める手段はなく ――ルイズが踏み潰されるその一瞬、キュルケ達に出来たことは彼女の名を叫ぶことだけだった。 しかし巨大な岩塊がルイズに打ち下ろされる寸前、誰かがその下に飛び込みルイズを弾き飛ばした。誰か?誰かって何だ。 ギアッチョ以外に誰がいるんだ。 キュルケは、そしてタバサはまさに茫然自失だった。死んだのはルイズではない。 得体の知れない平民の使い魔だ。ルイズは生きている・・・。喜ぶべきじゃないか。 頭ではそう思っているのに、キュルケは震えが止まらなかった。 隣のタバサはいつもと同じく何も喋りはしないが、その瞳は信じられないものを見たかのように見開かれていた。 次に事態を理解したのは土くれのフーケである。 無詠唱で魔法を使うメイジという一番の危険人物が死んだことに気付き、フーケはヨハネの首を貰い受けたサロメのように笑い狂った。 ちょこまかとうるさい落ちこぼれを殺して逃げるつもりが、死んだのは何をしでかすか解らない異端の平民だったのである。 信じられない幸運にフーケは狂喜した。 何かに突き飛ばされて呆然とへたり込んでいたルイズは、その哄笑で ようやく理解した。自分を突き飛ばしたギアッチョが、身代わりになって死んだ ということを。 「・・・・・・・・・・・・・・・嘘・・・・・・」 ルイズは長い時間をかけて、やっと一言言葉を吐き出した。 「嘘だよね・・・ギアッチョ・・・・・・」 ルイズの声は震えていた。ゴーレムのことなど完全に忘れてギアッチョの 『いた』場所へと歩き出そうとするが、立ち上がろうとした瞬間につんのめり 無様に倒れる。ルイズは自分の左足が吹っ飛ばされたことを思い出し、 だがそれでも一歩ずつ這って行く。ギアッチョがこんなことで死ぬわけない。 きっと生きている。すぐに足を壊して出てくる―― しかし少女の淡い期待は、地面に滲む鮮血によって脆くも打ち砕かれた。 ゴーレムの足に接していた場所から流れているそれは紛れも無く ギアッチョの血液であることを悟り、ルイズはその場に崩れ落ちた。 「返事してよ・・・・・・ねえ」 ルイズは消え入りそうな声で問いかける。 「生きてるんでしょ・・・悪い冗談はやめてよ・・・」 しかしギアッチョのいた場所からは何も返ってはこない。聞こえるのは、 壊れたように鳴り続けるフーケの笑い声だけだった。 「・・・そんな・・・・・・ギアッチョ・・・・・・・・・デルフ・・・」 自分が。自分が殺した。その事実に、ルイズは涙すら出なかった。 そろそろ殺すか、とフーケは思った。 今にも死にそうに打ちのめされているルイズを見て若干の憐憫が沸かないでもなかったが、無理やりバカ笑いをしてそれを打ち消した。 自分の正体を知った者を生かしておくわけにはいかない。 ルイズを殺し、こいつの左足を打ち抜いた岩塊で風竜の翼を貫く。 あとは二人を踏み潰すだけだ。 「悪いわねお嬢ちゃん・・・あの世で仲良くしなさいなッ!!」 グッ!! 「・・・・・・・・・?」 ルイズを蹴り飛ばそうとしたゴーレムの右足が、動かない。 いや、正確には――地面から離れない。 「・・・な・・・によ これ・・・・・・」 おのがゴーレムの足を見下ろして、フーケは戦慄する。ギアッチョを踏み潰した右足が、氷によって完全に地面に固定されていた。 そしてその氷の中から声が響く。彼女にとっては地獄の底から響く声、そして『彼女達』にとっては百年間も待ちわびていたように思える声だった。 「・・・・・・ギリギリだ・・・ ええ・・・?クソ・・・ ギリギリ・・・発動出来たぜ・・・」 その声にフーケの心臓は凍りつく! 「そして・・・発動しちまったからにはよォォォ~~~・・・・・・てめーは絶対に逃がさねェッ!!」 何をする気か知らないが・・・これはマズいッ!!そう思ったフーケだったが、ゴーレムの足は大地と同化しているかのように動かない。 そして―― 「ホワイト・アルバム・・・ジェントリー・ウィープスッ!!!」 ビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキィッ!!! 裏切り者を断罪する、氷結地獄コキュートス。まるでそこから響いてくるような声が、彼の姿無き半身を呼び起こす!岩人形の右足を覆う氷は電光石火の如く脛を、膝を、腰を駆け上り、右足から頭に至るまで、その全てが完全に凍りついた! 「なんなのよ・・・なんなのよこれェェェ!!」 無詠唱、という単語が彼女の脳裏によみがえった。彼女はうわごとのように繰り返す。 「こんなの・・・こんなの私達の魔法じゃない・・・!!」 しかしそんな彼女の怯えなど一顧だにすることなく、ギアッチョは無慈悲に宣言する。 「・・・ブチ・・・・・・割れな・・・・・・!!」 バガシャアアアアアァッ!! 千里に響く轟音と共に、ゴーレムの体が端から崩落を始める! 「ま・・・マズい・・・!!逃げないとッ!!」 フーケは慌ててレビテーションを唱えるが、その体は毫末も上昇することはなかった。 「な・・・なんで・・・・・・ハッ!?」 フーケはようやく気付いた。自分の足が、氷によって完全にゴーレムと固定されていることに。 そして彼女にもはや「火」を使う力は残っておらず―― 彼女は己のゴーレムの破片と共に、惨めに、そして無残に墜落した。 フーケの凍りついた両足は完全に割れて分断されていたが、レビテーションで逃げることも出来ないようにギアッチョはホワイト・アルバムで容赦なく地面と固定させた。もっとも、フーケはその時点で完全に意識を失っていたが。 とにかくそうしておいて、ギアッチョはルイズの元へ駆け寄る。 「ギアッチョ・・・!!」 ルイズはおのが使い魔の姿をはっきりと確認し、そこでようやく――そして どうしようもなく、ぼろぼろと涙をこぼした。ギアッチョはすたすたとルイズに近寄る。 言いたいことは色々あるが、とにかく一発ブン殴ってやるつもりで手を上げた。が。 がばっ!と血まみれの自分に抱きついてただごめんなさいと繰り返す少女をブン殴ることは、流石のギアッチョにも出来なかった。 振り上げた手をゆっくりと下ろすと、彼はとりあえず溜息をついた。
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「ちょっと、どこ行くのよ」 ゴーレムの肩から飛び降りようとする仮面の男に、土くれのフーケは非難めいた 口調で問いかける。 「ヴァリエールの娘を追う」 「わたしはどうするのよ」 「貴様は時間を稼げ 船が出港したならば後は好きにしろ」 合流は例の酒場で、と最後に言い残して男は宵闇に消えた。 男の去った方向を忌々しげにねめつけて、フーケはチッと舌打ちする。 「勝手な男だね全く・・・ま、これであいつともおさらば出来るわけだけど」 一方酒場では、降り注ぐ矢の雨にその身を晒しながらギーシュのワルキューレが 厨房へと走っていた。次々と突き刺さる鏃に身体をよろめかせながらも、どうにか 目的地へと辿り着く。 「本当にそう上手くいくかなぁ」 とぼやきつつも、ギーシュはキュルケの指示を遂行する。ワルキューレを操って 油の張られた鍋を乱暴に掴ませ、入り口に向かってそれを投げさせた。 「弱気になってちゃ、出来るものも出来なくなるわよッ!」 語尾に気合を込めてそう言うと、キュルケは素早く立ち上がって入り口に ぶちまけられた油に点火する。こんな時でも余裕を忘れない表情でキュルケが 再び杖を振ると、威勢のいい音を立てて炎が燃え上がり、今まさに中に踏み込もうと していた傭兵の一隊に容赦なく襲い掛かった。ごうごうと唸りを上げて燃え盛る 火炎に巻かれて一も二もなく逃げ出す彼らに、キュルケは追撃の手を休めることなく 杖を掲げて呪文を唱え続ける。敵に身を晒す彼女に罵声と共に無数の矢が射掛け られるが、とっくに読んでいたと言わんばかりにタバサが風で弾き飛ばし、その風を 使ってそのまま敵陣に炎を運び込む。怒涛の如く攻め立てる猛火に隊としての 統率もなくして逃げ回る彼らを満足げに眺めて、キュルケは優雅に一礼した。 「名もなき傭兵の皆様方 こんなにたくさんの鏃、わたくしとっても感激しましたわ お礼と言ってはなんですけれども、この『微熱』のキュルケ、精一杯お相手させて いただきますわ」 意思を持つかのように自由自在に襲い掛かる炎に、魔法の使えない傭兵達は 弓矢を放り出してなすすべもなく逃げ出した。どこからか調達した水をかぶって 突撃を敢行した一団もあったが、それもタバサのエア・ハンマーで丁重に追い 返されていた。そんな様子を俯瞰して、フーケは呆れたように首を振る。全く 使えない奴らだと思ったが、目的は足止めなので傍観を決め込むことにした。 そしてそのまま二分が経ち三分が経ち――五分が過ぎる頃には、殆ど全ての 傭兵が散り散りに逃げ出していた。 フーケはちらりと桟橋の方向に眼を遣る。船はまだ出港してはいないようだった。 「やれやれ・・・命を助けられた恩だけは返さないとね」 土くれのフーケは一つ嘆息してそう言った。 「十秒以内に出てきな!宿ごと潰されたくないならね」 聞き覚えのある声が上から降ってくる。ギーシュは不安げな顔で二人を見た。 「ど、どうする?」 「どうするって・・・出るしかないでしょ」 キュルケの言にタバサが頷いて同意の意を示す。フーケの秒読みが聞こえる 中素早く二言三言言葉をかわし、彼女達は入り口目掛けて一気に走り出した。 飛び出して来たキュルケ達を見てフーケは口を開いたが、その口から言葉が 出る前に彼女目掛けて逆巻く風に乗せて炎と石塊が撃ち出された。 「なッ!?」 いきなりの攻撃に面食らいつつも、フーケは自身にそれらが着弾する前に なんとかゴーレムの手を割り込ませる。 「このッ・・・ものには順序ってもんがあるでしょうが!」 怒りを露にして再び地面を睨むが、 「・・・!?」 彼女の視界には誰一人として映らなかった。 左下からゴォッという音が聞こえ、眼前の光景に驚きながらもフーケは 反射的にゴーレムの掌をその方向に向ける。当てずっぽうな動きでは あったが、そうして突き出された手は見事にキュルケの火球を受け止めた。 しかし一瞬遅れてキュルケを見たフーケは、またも目を疑った。その場に居た のはキュルケ一人――ギーシュとタバサはどこにも見当たらなかったのだ。 ――まさか!? フーケはゴーレムごと半壊した宿屋を向いていた身体を捻る。肩越しに見た 後方では、フーケに無防備に背を向けてタバサが疾走していた。タバサの 行く手からは、彼女の使い魔シルフィードが翼を羽ばたかせて猛然と 接近している。 「あの風竜で船まで逃げようってわけかい!そうはさせないよッ!」 フーケのゴーレムは乱暴に宿屋から崩落した岩塊を掴む。 ドシュゥゥゥッ!! その手から投げられた岩石は風を切り裂いてシルフィードに迫り、 「きゅい!?」 面食らった風竜は岩の弾丸を避けたまま、螺旋を描いて上空高く逃げて しまった。フーケはニヤリと笑うと、杖を振りながらタバサを見下ろす。 「ツメが甘いのよおチビちゃん!」 フーケの言葉に呼応するかのように、ゴーレムの足元からは四体の 甲冑の騎士が生まれ出す。武器を持たないその騎士達は、二体がタバサ、 二体がキュルケに徒手空拳で躍りかかった。二人はそれぞれ風と炎で 応戦するが、トライアングルの中でも上級に位置するフーケの錬金は そうたやすく破れるものではない。逃げ回りながら奮戦するタバサ達だが、 後ものの数十秒でフーケの騎士が彼女達を捕らえるであろうことは火を 見るより明らかだった。 大ゴーレムに続く騎士達の練成でかなりの精神力を消耗し、フーケは 若干荒い息を吐きながら笑う。 「諦めなさいな チェックメイトよお嬢様方」 「僕を忘れてないかい?ミス・ロングビル」 突如聞こえたその声にしまった!と心で叫ぶがもう遅い。フーケが声の する方へ振り返るのと、ギーシュのワルキューレが半壊状態のベランダ から跳躍したのはほぼ同時だった。フーケが呪文を唱える間もなく、 拳を振りかぶったワルキューレはその射程に彼女を捉えていた。 「女性に手を上げたくはなかったんだが、僕の友達の為なんだ 許してくれたまえ」 余裕ぶった口調と裏腹に、冷や汗をダラダラ流す顔を笑みの形に歪めて ギーシュが言う。その言葉にフーケが痛みを覚悟する前に、ワルキューレの 拳がフーケに容赦なく炸裂した。 「うぐッ・・・!!」 脇腹を強かに殴り抜かれて、フーケはゴーレムの肩から吹っ飛ばされた。 ――・・・ッ!中々のコンビネーションだわね・・・でも甘いわッ! 頭から宙に放り出されても、フーケは闘志を失くしていない。己の右手に杖が あることを確認し、冷静な心でレビテーションを―― 「きゃああっ!?」 いつの間にか接近していたシルフィードに腹をがっちりくわえられ、フーケは 思わず杖を取り落としてしまった。 「かかか、勝ったのかい僕達は!?」 「うるさいわよギーシュ ほら、よく見なさい」 キュルケとタバサに駆け寄って、興奮と不安の入り混じった口調で落ち着きなく 問い掛けるギーシュを軽くたしなめて、キュルケは楽しそうに宣言した。 「勝利よ わたし達のね」 杖を折られて、フーケは地面に横たわっていた。腰に両手を当てた格好で キュルケが正面から彼女を見下ろしている。緊張が解けたのかその場にへたり 込んでいるギーシュの横には、きゅいきゅいと嬉しそうに鳴くシルフィードの 頭を撫でて労うタバサがいた。 「シルフィードに岩を投げられた時は肝を冷やしたわ」 そう言ってキュルケは肩をすくめる。作戦が失敗したら、即座にシルフィードで 逃げるつもりだったのだ。シルフィード自体には当たらなかったが、あの投石は それでも十分すぎる効果を発揮した。もしギーシュの不意打ちが失敗していれば、 シルフィードが戻ってくるより早くキュルケとタバサはやられていただろう。 勝利を喜びながらも、彼女達は己の甘さを思い知った。 「さて、牢獄に叩き込まれる前に何か言っておくことはあるかしら?ミス・ロングビル」 一応杖を握ったまま、キュルケはフーケに尋ねる。フーケは勝者の余裕を見せる キュルケをキッと睨み―― 「お願い!見逃して頂戴!」 がばっと頭を下げた。予想だにしないフーケの行動に、キュルケは目を白黒させる。 「は、はぁ?何言ってるのよあなた」 「まだ売り払ってない盗品を全部あげてもいいわ!だからお願い!」 プライドも捨て去って殆ど倒れ込むような形で土下座するフーケを、キュルケは 信じられないといった顔で見下ろす。 「あなた、自分がしたこと忘れたわけ?わたし達を殺そうとしておいてよくもまぁ そんなことが言えたものね」 「そのことは謝るわ!本当よ!あの男・・・ギアッチョに殺されかけて、そして 地下の牢獄で死刑を待つ身になってわたしはようやく命の大切さを思い出したわ あんた達と同じ、わたしにも守るべき人がいる・・・ その子達の為にわたしは 死ぬわけにはいかないのよ」 フーケは必死の面相で訴えるが、キュルケは呆れたように首を振る。 「いい加減になさい 今時そんな嘘を一体誰が信じるって言うのよ」 「嘘じゃないわ!その証拠にさっきあんた達が宿から出て来るまで待ってた じゃない!やろうと思えば宿屋ごと踏み潰すことも出来たのよ!」 ギーシュは見ていられないという顔で、タバサはいつも通りの無表情でフーケを 見つめている。乱れた服の裾を直そうともせず、フーケは思わず同情して しまうほど哀れに助けを乞うている。キュルケもちょっと困った顔を見せたが、 破壊の杖の一件を考えるとフーケに同情の余地はない。 「・・・悪いけど、あれだけ躊躇なく人を殺そうとしてくれた後でそんなことを 言われても全く信じられないわ みっともない命乞いはやめなさいよ」 その言葉に、フーケは弾かれたように起き上がった。 「ッ!?」 「どれほど惨めだろうがみっともなかろうが・・・あの子達の為に私は生きなきゃ ならないのよッ!」 上半身を起こして、フーケは懐から何かを抜き放つ。双月を反射して鈍色に光る それは、およそメイジには縁のないもの――ナイフだった。 基本的に、メイジは剣を持たない。杖を差し置いて剣を持つなどということは、 杖で生きる彼らにとっては恥ずべきことであった。にも拘らずフーケは懐に ナイフを忍ばせ、迷うことなく引き抜いたのである。それに気付いてキュルケ達が 驚いた瞬間、フーケはシルフィードに飛び掛った。シルフィードに乗って何とか 逃げ切ろうとするフーケの賭けは、しかしタバサのウインド・ブレイクによって あっさり挫かれる。叩きつけられた風で彼女のナイフは後方へ弾かれ、彼女 自身もまた風を受けて仰向けに倒れこんだ。 「あぅッ!」 「・・・本当に、何としても逃げ出すつもりってわけね」 キュルケは一つ溜息をつくと、努めて感情を殺した顔でフーケを見る。 「だけどダメよ 今更あなたは信じられないわ」 「ほら、行くわよ!」 町の衛士に突き出そうと、キュルケはフーケの腕を取る。 「ま、待ってくれたまえ!」 しかしフーケを引っ張り起こそうととする直前、ギーシュがキュルケを呼び止めた。 「何よギーシュ、信じるって言うの?」 綺麗な顔に困惑の色を浮かべて彼女はギーシュを見る。ギーシュはまだ迷って いるようだったが、意を決して口を開いた。 「ぼ・・・僕はフーケを信じるべきだと思う 勿論彼女の行動が肯定出来る わけじゃないが、彼女の言っていることは僕にはよく分かるんだ」 その言葉に、フーケが驚いた顔でギーシュを見る。 「命を失うような目に遭えば、多かれ少なかれ人は変わる・・・僕もそうだった 散々馬鹿にされた挙句に自分の魔法で殺されかけて、僕はようやくルイズの 受けていた屈辱が理解出来た きっとフーケも同じなんだと思う 眼前に己の死を突きつけられて、彼女はやっと死の恐怖が理解出来たんだ そして、己の死によって彼女の言う守るべき人達が一体どうなるのか・・・ それすらも、彼女はそこで初めて理解したんだと僕は思う」 ギーシュは真剣な眼でフーケを見据える。 「・・・ギーシュ」 キュルケは何か言おうとしたが、この上なく真面目な彼の眼を見て黙り込んだ。 キュルケに申し訳なさそうな顔を向けて一言「ありがとう」と言って、ギーシュは フーケの前にしゃがみこんだ。 「フーケ・・・いや、ミス・ロングビル 僕にはあなたにメイジとしての誇りが あるかは分からない ・・・だから、あなたが守るべき人達にかけて誓って欲しい これからはその人達の為だけに生きると」 その言葉に、フーケは肩を震わせて俯く。その口から小さく、しかしはっきりと こぼれた「誓います」という一言に、ギーシュは満足げに頷いて立ち上がった。 「すまないキュルケ・・・でもきっと大丈夫だよ 僕には分かるんだ」 自信に溢れる笑みでそう言うギーシュに、キュルケは溜息をついて笑う。 「全く・・・あなたって、本当にバカよね」
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本格推理SS ゼロの使い魔消失事件-事件編 ゼロの使い魔消失事件-解決編 ゼロの使い魔消失事件-終末編
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「嘘・・・どうしてフーケが!?」 岩石を切り抜いて作られたラ・ロシェールそのものを素材にして錬金された 巨大ゴーレム。突如出現したそれの肩に長い緑髪をなびかせて座っている女は、 忘れもしない土くれのフーケだった。自分の言葉を中断されて少し助かったと 思ってしまい、ルイズはぶんぶんと首を振る。フーケは端正な顔を不機嫌に 歪めてルイズに答えた。 「実に親切なお方がいらっしゃってねぇ わたしみたいな美人はもっと世の中に 貢献しなくちゃいけないっておっしゃってね 牢から出してくれたのよ」 皮肉たっぷりにそう言って、フーケはじろりと隣を睨む。彼女の刺すような視線の 先にいたのは、白い仮面をつけた黒マントの貴族の男だった。フーケの言動に 一切の反応を示さず、腕を組んで冷厳とルイズ達を見下ろしている。 「個人的にはあんた達なんかとは二度と関わりたくないんだけどね これも仕事よ、恨まないことね!」 言うが早いか、ゴーレムの柱を束ねたような腕が高速で振り下ろされた。いつの 間にか己の剣を握っていたギアッチョは、ルイズを小脇に抱えるとベランダの 手すりを踏み台にルーンの力で数メイルを飛び上がった。直後岩で出来た ベランダを粉々に破壊したその拳に見事に着地して、ギアッチョはピクリとも 動かない表情のまま口を開く。 「やっぱりよォォ~~ オレは戦うのが性に合ってるみてーだなァァ」 「ちょ、ちょっと!どどど、どこ触ってんのよこのバカ!離しなさいよ!」 小脇に抱えられたままルイズがじたばたと騒ぐ。 「どこ触ろうと同じだろーがてめーの身体は 黙ってねーと舌噛むぞ」 「おなっ・・・!?」 ルイズの頭にガーンという音が響き渡った。心に深いダメージを負ったルイズの ことなどつゆ知らず、ギアッチョは戦闘態勢に入った眼でフーケ達を睨む。 足場にしている拳に振り落とされる前に、「ガンダールヴ」の脚力で一瞬のうちに 肩へと駆け上がる。デルフリンガーを持つ方向に身体をひねり二人まとめて 横薙ぎにブッた切るつもりだったが、 「チィッ!」 仮面の男が一瞬の機転でフーケの首根っこを掴んで後方へ落下した為、 デルフリンガーは虚しく宙を切った。ギアッチョは特にイラだった顔も見せずに 地面を覗き込む。レビテーションをかけたのか、男とフーケは無事に地上に 降り立っていた。フーケと結託しているのなら、仮面の男とその仲間には当然 ホワイト・アルバムのことは知られているだろう。もはや隠す必要もないと考えて ギアッチョはゴーレムを凍結しようとするが――下のほうから聞こえてきた怒声や 物音がそれを中断させた。 「どうやら・・・あいつらも襲われてるみてーだな」 放っておくべきか一瞬迷ったが、酒を飲んでいるならマトモに戦えていないかも 知れないと考え、ギアッチョは助けに行くことを選択した。もはや抵抗もしない ルイズを小脇にかかえたまま、見るも無残に破壊されたベランダから部屋に 飛び込み、扉を蹴破って廊下を走り、手すりを乗り越えて階段を飛び降りる。 果たしてギーシュ達は、全員無事に揃っていた。もっとも、テーブルを盾にして いる彼らの頭上では無数の矢が飛び交っていたが。 ギーシュ達と共にワルドがいたのを見て、ギアッチョはピクリと眉を上げる。 背格好といいタイミングといいあの仮面の男がワルドだとギアッチョは殆ど確信 していたのだが、どうやら自分の推理は間違っていたらしい。考え込む彼に 気付いて、ギーシュが声を上げる。 「ギアッチョ!無事だったのかい!」 その声でキュルケ達は一斉にギアッチョを見た。ギアッチョはフンと鼻を鳴らすと、 ルイズを引っ張ってキュルケ達の後ろに身を伏せる。 ギアッチョはフーケがいることを伝えたが、どうやらその必要はなかったらしい。 戸口からは思いっきりゴーレムの足が覗いていた。「それはともかく」と前置きして、 キュルケは鬱オーラ全開で俯くルイズを見る。 「ルイズ、あなた大丈夫?」 「・・・・・・尊厳を汚された・・・」 「は?」 意味が分からずに怪訝な声を上げるキュルケだったが、「一年後に後悔しても 許してあげないんだから」だの「まだ変身を三回残してるのよ きっとそうよ」だのと 肩を震わせながらブツブツと呟いているルイズを見てなんとなく事情を察した。 とりあえずルイズは放置することに決めて、彼女はギアッチョに向き直る。 「どうするの?ギアッチョ」 言外に「魔法を使うのか」と尋ねるキュルケに、ギアッチョは思案顔で黙り込んだ。 しかしギアッチョが結論を下す前に、ワルドが口を開く。 「諸君、このような任務は半数が目的地に辿り着けば成功とされる」 周りの状況などおかまいなしに本を読んでいたタバサが、それを受けてワルドを 見る。ぱたりと本を閉じると、キュルケ、ギーシュ、そして自分を指差して「囮」と 呟いた。ワルドは重々しく頷いて後を引き継ぐ。 「彼女達が派手に暴れて敵を引きつける 僕らはその隙に、裏口から出て 桟橋へ向かう」 その言葉に、ルイズが弾かれたように顔を上げた。 「ダメよそんなの!フーケもいるのよ!?死んじゃったらどうするのよ!」 「いざとなれば逃げるわよ それにわたし、今ちょっと暴れたい気分なのよね」 キュルケは余裕の笑みでそう嘯く。それに追従してタバサが「問題ない」と言い、 ギーシュは相変わらずガタガタ震えていたが、「いいい行きたまえよ君達! ぼ、ぼぼ僕はフーケのゴーレムに勝った男だぜ!」 と誰が見ても明らかに分かる虚勢を張り上げてルイズ達を促した。 「行って」というタバサの声と、「行きなさい」というキュルケの声が重なる。 ルイズはそれでも二の足を踏んでいたが、 「別にルイズの為にやるわけじゃないんだからね 勘違いされちゃ困るわよ」 というキュルケの発破で、何とか行く決心がついたようだった。「わ、分かって るわよ!」とキュルケを睨むと、「おーおー、素晴らしきは友情だね」と笑う デルフリンガーに二人で蹴りを叩き込んで走って行った。それを追ってワルドも 裏口へ去って行く。去り際ルイズが小さく呟いた「ありがとう」という言葉に 意表を突かれて一瞬顔が赤くなったキュルケだったが、コホンと一つ咳をすると すぐいつもの顔に戻った。 「それで、今度はどんなお言葉を下さるのかしら?」 未だ動かないギアッチョに余裕の仕草で笑いかける。ギアッチョは溜息を一つ つくと、彼女達に向き直って口を開いた。 「このまま死なれちゃ寝覚めが悪いんで忠告しといてやる ・・・命を賭けてまで戦おうとするんじゃあねーぞ」 慈悲の欠片も見当たらないような表情で、しかしギアッチョはそう言った。 「無理を悟ったらとっとと逃げろ 桟橋とやらで追いつかれたところでどうせ オレが何とか出来るんだからな」 一見どうでもいいような口調でそう言って、ギアッチョはガシガシと頭を掻く。 そうならない為に今まで隠して来たんじゃないのか、等と言う気は誰にも なかった。一様に真剣な顔で頷く三人に一瞥を向けると、彼は無言で ルイズ達の後を追った。 音を立てずに駆け去るギアッチョの後姿を見送って、キュルケはふぅと 溜息をつく。 「全く、この主にしてこの使い魔ありって感じよねぇ」 やれやれといった風に笑うキュルケに、タバサはこくりと頷いて杖を握った。 大きな音を立てて自分の顔を叩いて、ギーシュは一つ気合を入れる。 「よ、よし!行こうじゃないか二人とも!」 「ええ、火傷しない程度にね」 二人して杖を抜き放ち、ニヤリと笑いあった。
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学院長室。四人のメイジと一人の使い魔は、オールド・オスマンに事の次第を 報告していた。全てを聞き終えたオスマンは、ステレオタイプな仙人ヒゲを いじりながら口を開く。 「ミス・ロングビルが土くれのフーケじゃったとはな・・・全く騙されたわい」 一体どこで採用されたのですか、という隣に立つ教師の問いで彼が秘書を 適当に採用していたことが分かり、オスマンは全身に彼女達の非難の視線を 浴びるハメになった。 「ま、まぁ問題はそこではない 重要なのは今君達が成し遂げたことじゃ」 老齢の学院長は無理やりに話を戻し、コホンと一つ咳払いをして続ける。 「よくぞ土くれのフーケを捕まえ、我が学院の至宝を取り戻した!」 誇っていいのかよく分からない顔で二人、いつも通りの無表情で一人、そして これ以上なく誇らしげな顔で一人がオールド・オスマンに一礼した。 「フーケは城の衛士に引渡し、『破壊の杖』は無事この宝物庫に収まった これで一件落着と言うわけじゃ・・・そこで!」 オスマンは生徒一人一人の頭を撫でながら続ける。 「君達の『シュヴァリエ』の爵位申請を、宮廷に出しておいた また追って沙汰が あるじゃろう ミス・タバサは既に『シュヴァリエ』の爵位を持っているからの 彼女には精霊勲章の授与を申請しておいた」 「本当ですか!?」 四人の生徒達は一様に喜んでいる。 「勿論じゃよ 君達はそのぐらいのことをしたのじゃから」 しかしルイズは、ハッと気付いてギアッチョを見た。 「・・・あの 彼には・・・ギアッチョには何もないんですか?」 松葉杖をついたルイズの質問に、 「残念ながら・・・彼は貴族ではない」 オスマンは申し訳なさそうな顔で答える。 「そんな・・・オールド・オスマン 彼は一番の手柄を立てましたわ!」 「彼女の言う通りです ギアッチョがいなければ今頃僕らはどうなっていたことか!」 「・・・大戦果」 キュルケ達が一斉にフォローに入るが、 「すまんの・・・そうしたいのはやまやまなのだが、ここはトリステインなのじゃ 平民が貴族になることは――出来ない」 聞き分けてくれ、とオールド・オスマンは言う。ギアッチョはそんな彼女達の 抗弁を意外そうに見ていたが、やがて口を開いた。 「別に褒美が欲しくてやったわけじゃあねー その辺にしとけ」 本人のその言葉にルイズ達は不本意ながらも口を閉ざし、それを機会に 偉大な老師は話題を変える。 「さて、今宵は『フリッグの舞踏会』じゃ 『破壊の杖』も無事戻ってきたので 予定通り執り行うぞ」 四人は釈然としない気持ちだったが、本人がいいと言っているならしょうが ない。キュルケ達は無理やり気持ちを切り替えることにした。 「そう言えばそうでしたわね・・・フーケの騒ぎで忘れておりましたわ」 「今日の主役は君達じゃ 用意をしてきたまえ しっかり着飾るのじゃぞ」 いつもの好々爺に戻ってそう言うオスマンに礼をして、四人はドアに向かった。 ルイズはその場を動かないギアッチョに眼を向けたが、「先に行ってろ」と 言うギアッチョに心配そうに頷くと、慣れない松葉杖に苦戦しながら出て行った。 「何か・・・ワシに聞きたいことがあるようじゃの」 そう言うと、オールド・オスマンはギアッチョに向き直った。ギアッチョは黙して 老翁を見つめている。オスマンはそれを肯定と受け取った。 「言ってごらん できるだけ力になろう 彼女達を助け、フーケを捕らえて くれたせめてもの礼じゃ」 それからオスマンは、隣に控える雑草一本ない頭頂部を持つ教師――コル ベールに退室を促した。一体何が始まるのかと期待していたコルベールは 今正にかぶりつこうとしていたケーキを取り上げられた子供のような顔で 部屋を出て行った。それを見届けてからギアッチョは口を開く。 「『破壊の杖』・・・あれをどこで手に入れた?」 キュルケが抱えていたあれは、間違いなく自分の世界の兵器、ロケット ランチャーだった。何故あれがこっちの世界にある?自分の故郷、 イタリアに戻る方法は存在するのか?・・・ 全てを聞き終えたオスマンは、少し驚いた顔をしながらもこの兵器の由来を 語りだした。曰く、この杖は自分の命の恩人が持っていたもので、その男は 既に死んでこの世にいない。そして彼が何故、どうやってこの世界に来た のかはこのオスマンにもさっぱり分からないということだった。 「・・・・・・そうか」 ギアッチョは黙ってそれを聞いていたが、やがて諦めたようにそう言った。 何せルイズが連日徹夜で調べてくれても見つからなかったのだ。そう簡単に 分かるとは、ギアッチョも思ってはいなかった。オスマンはすまんの、と 一言謝罪を述べてから、 「しかしおぬしのこのルーン・・・これについては分かるぞ」 ギアッチョの左手を取ってそう言った。 アルヴィーズの食堂、その二階のホールが今夜の舞踏会場だった。中は 色とりどりに着飾った貴族達で溢れ、平民なら頼まれても入りたくないような 豪奢な雰囲気が漂っている。が、ギアッチョは勿論そんなことに躊躇など しない。ずかずかと入り込んで好き放題に飯を食い、シエスタについで もらったワインを豪快に飲んでいた。さっきまではキュルケと話をしていたが、 ちょっと踊って来ると言って彼女はホールの中央へと歩いていったので、 ギアッチョは今デルフリンガーと会話をしている。 「いやー、しかしダンナも使い魔として召喚されるぐれーだからなんか能力は 持ってんだろーなとは思ってたが いやはやこんな化け物じみた魔法を 使えるたぁね!おでれーたよ俺は」 うんうんと何か一人で納得しているデルフだった。 「あれは魔法じゃあねー スタンドっつーオレの世界の能力だ」 デルフは基本的には己の使い手に味方するあまり主体性のない剣なので 特に情報をバラされる心配はない。そういうわけでギアッチョはルイズの他に このデルフリンガーにだけは隠し事をやめている。 「ほー そうかい しかしおっそろしい能力だよなぁ・・・無詠唱で一瞬の うちに空気までも氷結させるなんざよー あいつらメイジにしてみりゃあ まさに魔人の所業だね あん時ゃ流石の俺もブチ砕けそうだったぜ」 スタンドとは精神のヴィジョン。つまり彼らメイジの扱う魔法と、本質的には 同等のものだと言える。もしもギアッチョのスタンドがなんらかの形を取る ものであったならば、彼らには恐らくその姿が見えていたはずだ。デルフ リンガーには、本人はまだ気付いていないが強力な魔法吸収能力がある。 デルフがあの極寒の世界でブチ割れずに済んだのは相当に強力な固定化が かかっているということともう一つ、彼が所持しているその力がスタンド・・・ 精神の力に密かに反応して発動していたせいなのだが、彼がそれに気付くのは もう少し後の話だった。 テーブルの上で意外な健啖ぶりを発揮しているタバサや性懲りもなく次々と 女性を口説いてはモンモランシーに殴られているギーシュを見ながら、 ギアッチョはホールの奥へと進む。はたしてルイズはそこにいた。 「よぉ」 上から降ってきたその声に、ルイズは握っていたフォークを置いて顔を上げる。 「何してんだ? こんなとこでよォ~」 自分を見下ろすギアッチョから眼を逸らして、ルイズは答えた。 「・・・わたしは主役なんかじゃないもの」 一人で勝手に突っ走って仲間に迷惑をかけ、そして自分の身まで危うくし挙句 己の使い魔まで亡くしかけたのだ。そんな自分にどうして土くれのフーケを倒した ヒーローになる資格があるだろうか。キュルケ達に説得されて一応は着飾って 来たルイズだったが、入場した途端にホールの門に控える衛士に大声で紹介を され、彼女はもう恥ずかしいやら悲しいやらで一目散に壁際の席まで逃げて きたのだった。 「本当なら謹慎をくらっていてもおかしくないのに・・・場違いにも程があるわ」 ギアッチョは頭を掻いた。そりゃあいくら皆無事で済んでるからと言ってそう 簡単に開き直れるわけもないだろう。 全く手のかかるガキだ、とギアッチョは溜息をついた。 「ま・・・反省するのは結構だがよォォー てめーが主役じゃないなんてこと だけはねーぜ」 「え・・・?」 きょとんとしているルイズを見下ろして、ギアッチョは続ける。 「あの時てめーが討伐隊に志願しなきゃあどうなった?おそらくキュルケは 手を上げないだろう・・・それならタバサも志願する理由はねえ ギーシュの 野郎も立ち聞きもそこそこに逃げていっただろうよ そして教師共が 行かされることになれば・・・フーケを逃していたか、もしくは殺されていた 可能性もあった」 ギアッチョは眼鏡を中指で上げて、こう結論した。 「てめーが杖を掲げたからこそ、今のこの状況があるってわけだ」 ルイズはしばらくギアッチョを見上げて呆然としていたが、やがて我を取り 戻すと、ぷいと横を向いて言う。 「・・・な、何よ 危うく丸め込まれそうだったけど・・・結局は上手いこと言って 励まそうとしてるだけじゃない 余計にみじめになるだけだわ」 ネガティヴまっしぐらである。そんなルイズにギアッチョはもう一つ溜息を つくと、座っている彼女の目線に合うようにしゃがみこみ・・・その綺麗な 鳶色の瞳を覗き込んで、 「嘘じゃあねえ」 ただ一言、こう言った。 ルイズは当惑している。ギアッチョはいつも通りの凶眼で、ルイズをいつも 通りに睨んでいるだけだ。だけど何故だか今、その瞳の奥に優しさが 見えた気がして――有り得ないことだと自分に言い聞かせつつも、一度 そう思ってしまったルイズは彼と眼が合っているのがどんどん恥ずかしく なって、結局すぐに眼を逸らしてしまった。この使い魔は本気で言っている のだろうか?いや、そんなわけはない・・・今日わたしがしたことを知ってて 誰が本気でそんなことを言う?・・・・・・でも、もし本気だったら? やや混乱気味のルイズの頭の中で肯定と否定がぐるぐる回る。 ・・・もし、本気だったら。 「・・・・・・嘘じゃないなら」 ルイズは横を向いたまま、スッと手を差し出す。 「・・・・・・お・・・踊りなさいよ・・・」 ギアッチョは思わず「ああ?」と言いかけたが、更に一つ溜息を吐き出すと、 すっくと立ち上がり・・・ルイズの手を取った。 「・・・・・・一回だけなら付き合ってやる」 意外にも――実に意外にも、ギアッチョはダンスが上手かった。やり方 など一切知らないらしく本当に適当なダンスだったが、ロクに左足が 使えないのですぐにバランスを崩すルイズをリードして、足一つ踏むこと なく踊っている。 「・・・う、うまいじゃない・・・あんた」 それは当然だった。ギアッチョはスケートでアスファルトを時速80キロ以上で 走る男である。バランス感覚には相当なものがあった。 ――ったくよォォーー 寝ても醒めても殺しに塗れてたオレがなんだって こんなところでガキ相手にダンスを踊ってるってんだァァ? ギアッチョはルイズを見た。更にバランスが崩れやすくなるというのに、 赤く染まったその顔はギアッチョから背けられたままだ。「全く不器用な ガキだな・・・」と、ギアッチョは今度は心の中で嘆息する。 ――とっとと帰りてーところだが・・・もう少してめーの面倒を見てやると するぜ しょーがねーからよォォ~ 世にも不機嫌に見える顔で、しかしギアッチョは踊り続けた。 「おでれーた!」 さっきまでルイズが座っていた席に松葉杖と共に立てかけられている 魔剣は、実に機嫌の悪そうな男と彼から眼を背け続ける少女という、 全く不可解な組み合わせのダンスを見ながらそう叫んだ。 「しかも使い魔とご主人様だ!こんなダンスは見たことねえ!」 デルフリンガーはもう一度、心底面白そうに叫ぶ。 「こいつはおでれーた!」 ==To Be Continued...
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「サガ フロンティア」のブルー ゼロの使い魔・ブルー編-01 ゼロの使い魔・ブルー編-02 ゼロの使い魔・ブルー編-03 ゼロの使い魔・ブルー編-04 ゼロの使い魔・ブルー編-05 ゼロの使い魔・ブルー編-06 ゼロの使い魔・ブルー編-07 ゼロの使い魔・ブルー編-08 ゼロの使い魔・ブルー編-09 ゼロの使い魔・ブルー編-10 ゼロの使い魔・ブルー編-11 ゼロの使い魔・ブルー編-12 ゼロの使い魔・ブルー編-13 ゼロの使い魔・ブルー編-14 ゼロの使い魔・ブルー編-15 ゼロの使い魔・ブルー編-16 ゼロの使い魔・ブルー編-17 ゼロの使い魔・ブルー編-18 ゼロの使い魔・ブルー編-19 ゼロの使い魔・ブルー編-20 ゼロの使い魔・ブルー編-21 ゼロの使い魔・ブルー編-22
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ルイズは今夜も夢を見ていた。古ぼけた部屋の中の、かすみがかった人物達の夢。 ルイズはまた自分ではない誰かになっていて、かすみがかった部屋でかすんだ姿の まま、かすんだ男達と音の擦り切れた会話を交わしていた。 あの使い魔、ギアッチョを召喚した時から――いや、正確にはギーシュとの決闘を 終えた日から、ルイズはこの不思議な夢ばかりを見るようになっている。 使い魔となった者は、主人の目となり耳となる能力や人語を解する能力などを手に 入れる。ギアッチョにはそんな力はなかったが、ひょっとするとそれが夢の共有と いう形で発現しているのかもしれないとルイズは考えた。もしそうだとすると、この 夢を決闘の翌日から見るようになったということは――あの決闘を通して、 ギアッチョが自分を少し認めてくれたということなのかもしれない。ならば、と ルイズは思う。日々霧が晴れるように鮮明さを増してゆくこの夢は、彼が徐々に 心を開いていってくれているということなのだろうか。勿論、霧が全て消えれば 信頼度MAXなどというわけではないのだろうが、興味なんてさらさら無いように 見えるギアッチョが日々内心自分に心を開きつつあると思うと、ルイズはなんだか 無性に嬉しかった。 「どこに行くのよ」 ドアに向かって立ち上がったギアッチョにルイズが問いかける。外はもう双月が 煌々と輝いている時間である。 「剣の練習だ」 ギアッチョはそう言って喋る魔剣デルフリンガーを掴む。 「ちょっと待って わたしも行くわ」 そう言ってベッドから跳ね起きるルイズをギアッチョは物珍しげな眼で見る。 「ああ?何しに行くんだよ」 「何しにって・・・こっ、このわたしが見てあげるって言ってるのよ!ありがたく 思いなさい!」 ルイズはそう言うとギアッチョより先にドアを開けて行ってしまった。ギアッチョは その後姿を眺めながら、 「全くコロコロと機嫌の変わるヤローだなァァ あれが女心と秋の空ってヤツか? え?オンボロよォォ~~」 デルフリンガーの柄を鞘からわずか引き抜いて言う。話を振られた魔剣は、 「えっ!?あ、ハ、ハイ そのようでダンナ・・・」 先日ギアッチョにタンカを切った時の威勢のよさは微塵も無くなっていた。 ギアッチョが中庭へ出ると、先に到着していたルイズがキュルケと喧嘩をしていた。 その後ろには心配そうに主人を見守るフレイム。二人をサイドから眺めるような 位置でタバサが本を読んでいる。 「何でてめーらがここにいる?」 ギアッチョが当然の疑問を発すると、 「ちょっと食べすぎちゃったのよ で、運動しようと思ったらこのおチビちゃんが やって来たワケ」 返答にもルイズへの罵倒を織り交ぜるキュルケだった。 「だ、誰がチビよ!このストーカー!」 「ストッ・・・!?」 「ストッ・・・!?」 ルイズの一撃はキュルケの心を見事に刺し貫いた。別に感謝されたくてやって いたわけではないが、それにしたってキュルケの行動は――無論本人は肯定など しないだろうが――ひとえにルイズを心配するが故なのである。そこに気付いて いないとはいえ、ルイズのこの一言は相当なダメージだった。 「・・・ストーカーね・・・ フフフ・・・ストーカーですって・・・」 がっくりと肩を落としてブツブツと呟くキュルケに流石のルイズも異変を感じたのか、 「えっ!?ちょっとわたし何かした!?」とタバサに助けを求めている。 タバサが「どっちもどっち」と呟いたのを合図に、ギアッチョは彼女達から魔剣へと 視線を移す。 「で? どーすりゃあいいんだオンボロ」 「ど、どうするって?」 「剣なんざ扱ったこともねーって言わなかったか?喋れんなら剣の指南ぐれー 出来るだろ 前の持ち主の剣術とかよォォー」 完全に人まかせ、否剣まかせのギアッチョである。 「あっ、あーあーなるほど!だからダンナはわざわざこの俺をお買いになられた わけッスねェー!さすがはギアッチョのダンナ!」 デルフリンガーはなんとかギアッチョの機嫌を損ねまいと頑張っている。 「てめーそのダンナってのはどうにかならねーのか?」 「え・・・いや、相棒ってのもなんか違うし兄貴はもう取られてるし・・・」 よく分からないことを言い出すデル公だった。 「まぁいい で、結局どーすんだ」 「どうするって言われても・・・え、えーと じゃあとりあえず剣を抜いて・・・」 ギアッチョは言われるままに柄に手をかけ、剣を引き抜き―― バッグォォオオン!! 突如として中庭に轟音が鳴り響いた! 「何・・・だァァ~~~?」 ギアッチョが音のしたほうを振り向くと、岩が集まったような巨大な化け物が 本塔の壁を殴りつけているところだった。 「あれも使い魔だってェのか?」 抜きかけた剣を収めてルイズ達と合流したギアッチョが問う。 「あれはゴーレムよ それもとんでもなく大きい・・・!あんなものを練成する なんて・・・少なくともトライアングルクラスのメイジだわ」 どうやらあれは魔法によって作られるものらしい。彼女達の反応を見るに、 相当高度な魔法のようだ。 「なんにしても・・・見過ごすわけにはいかないわね!」 言うが早いかキュルケが走り出し、 「ちょっ、何やってんのよ!」 ルイズがそれを追いかける。タバサはギアッチョにちらりと眼を向けると、 「危険」 一言告げて先の二人を追いかける。ギアッチョは一つ大げさに溜息をつくと、 仕方なく彼女達のあとに続いた。 ゴーレムの肩の上に、黒衣に身を包んだ女性が立っている。彼女――土くれの フーケは、今まさに「仕事」の只中であった。大怪盗の名を持つ彼女の今宵の 目的は、トリステイン魔法学院本塔の宝物庫に秘蔵されている「破壊の杖」で ある。幾重にも封印が施された扉からの侵入を諦めた彼女は、魔法の薄い 外壁のほうを狙っていた。しかし内側よりは防御が甘いとは言え、高レベルの メイジがかけた固定化の魔法はそう簡単に破れるものではない。ゴーレムの 拳に、本塔の外壁は全くこたえた様子を見せなかった。しかしフーケは 慌てない。ぶつぶつと何事か呟くと、ゴーレムの両腕は鋼鉄の塊へと変じた。 フーケのゴーレムはそのまま壁へと突きのラッシュを放ち――何度目かの 突きで、固定されていた壁は見事に爆砕した。 フーケはちらと地面を見下ろす。学院の生徒達が何名かこちらに向かって いるが、彼女はクスリと笑うとそのまま宝物庫へと侵入した。 キュルケは走りながら魔法を唱え、ルイズとタバサがそれに続く。三者三様の 魔法が激突するが、多少の破損が認められるだけでゴーレムは問題なく 動き続ける。小うるさいアリ共を潰すべく、動く岩塊が右腕を打ち下ろし、 「きゃああっ!?」 間一髪逃れた三人に容赦なく左腕が振り下ろされる! 殺られる――!!ルイズは死を覚悟した。 しかし鉄の拳が彼女達を押しつぶす寸前、タバサが魔法を発動させる! バシィィィンッ!! タバサが打ち込んだ風がゴーレムの拳を刹那弾き返し、 「逃げて」 言うや否や二人に杖の先を向ける。 「なッ・・・タバサ!!」 タバサの風に二人はゴーレムの射程外まで吹っ飛び、そして再び呪文を 唱える間も、ましてや逃げる間も少女達の悲鳴が届く間もなく、タバサを 鋼鉄の拳が―― ズンッ!! 圧死の痛みの代わりに誰かに抱きかかえられる感触を感じて、タバサは 閉じていた眼を開いた。少女の眼に最初に飛び込んできたものは、 幾度も眼にしたことのあるボタンの多い服。そして彼女の頭上で、幾度も 耳にした声が響いた。 「てめー・・・シルフィードだったか?なかなかガッツがあるじゃあねーか」 ギアッチョが飛び乗ったシルフィードは、彼が何かを言う前に主人目掛けて 亜音速で飛来し、ゴーレムの拳が地面に激突する一瞬の間隙を縫って 主人を救い、空へと上昇した。タバサを捕まえたのはギアッチョである。 ギアッチョとシルフィード、それぞれが一瞬ですべきことを把握しなければ 出来ない芸当だった。使い魔同士の信じられないコンビネーションに、 破壊の杖を抱えて出てきたフーケを含む誰もが呆然と空を見上げていた。 一瞬あっけに取られていたフーケだったが、目的を果たしたことを思い出すと さっさとこの場から逃げることに決めた。地響きを立てて去ってゆくゴーレムを 見送って、 「大丈夫」 とタバサは一言口にする。それを合図にギアッチョが抱えていた手を離し、 タバサの命で風竜はゆるゆると地上へ向かった。 「――ありがとう」 シルフィードが地面に降り立つ直前、タバサは小さな声で言う。ギアッチョは 一瞬だけタバサに眼を遣ると、フン、と鼻を鳴らした。 「タバサ!!大丈夫!?タバサ!!」 「無事なのあんた達!?」 地上に戻った2人と1匹に、キュルケとルイズが駆け寄る。その顔は今にも 泣き出しそうだった。ギアッチョは3人を見渡して、誰にも怪我がないことを 確認すると、 「てめーらそこに並びな」 彼女達を一列に整列させる。 そしてルイズ達に待っていたのは。 「このッ・・・バカ野郎共がッ!!!」 鬼も裸足で逃げ出さんばかりのギアッチョの怒鳴り声だった。